爱理
とだけ书かれていた。
奈良岛の脚はふらふらと动き、彼は気がつくと2034号室の前にいた。
ここに来る気がなかったといえばウソになる。しかし、来ることに戸惑いを持っていたことも确かだ。ホテルの一室で、憧れの人と……。
いやいや、过度な期待はしてはならない。彼女にはもう恋人もしくは爱人がいるのだ。自分みたいは者が今更相手にされる訳がない。大方、今日の目撃を谁にも言わないでくれとかいう话だろう。それをネタに强请ろう等という気持ちは、奈良岛にはさらさらなかった。ただ、甘酸っぱい丧失感だけが彼の心に広がっていた。
数回、ノックする。
返事はない。
(早く着き过ぎたかな)
そう思った时だった。
「ごめんなさい、呼び立てて」
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廊下の向こうから、柏原爱理が小走りに近付いて来た。
「今、开けるわ」
「え、ここでいいですよ」
奈良岛は远虑気味にそう言った。
「立ち话もなんだし、いいから入ってよ」
ドアのロックが解除される音が响くと、柏原爱理は奈良岛を押し込むように、室内へと入れた。
室内の明かりが灯される。中はチェックインしたばかりのようで、スーツケースも闭じられて、部屋の隅に立て挂けられていた。ベッドもきちんとメイキングされ、その上で寝た様子はない。
「何ぼうっとしているの。とにかく座ったら」
あらぬ妄想に耽っていた奈良岛は、女の声にはっと我に返る。
促されるまま、彼はソファに座った。
「何か饮む?」
「い、いえ、特には……」
「そう」
彼女は备え付けの冷蔵库からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、グラスに注ぎ彼の前のテーブルに置いた。
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そして柏原は上着を脱ぐと、ワイシャツとタイトスカートのまま、テーブルを挟んで奈良岛の正面向かいに座る。彼女の手には、シャンパンのグラスがあった。
微细な泡がその中で弾けている。
「ねえ、今日のパーティ、楽しくなかったの?」
「そ、そういう訳では……」
奈良岛は言い淀む。
「じゃ、何で直ぐに帰ろうとしたのよ」
「そ、それは……」
彼は柏原のことが真っ直ぐに见られない。
「奈良岛君、あたしに変な远虑してるんじゃない?」
「え、远虑なんて……」
柏原は叹息する。
「ねえ、奈良岛君、贵男、あたしについて色々噂を耳にしていると思うけれども、何処までが本当だと思う?」
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