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日文89(84)


「この前はすぐに追いかけてきたのに……。それが秘策ってやつなの?」
 秘策……。
 そんなの、本当はない。
 魔王を倒すために覚えてきた秘策はいくつもある。
 けれども、三日前に出会ったばかりのチャラを捕まえる秘策なんて。
「ねえ……、具合でも悪いのかなぁ……」
 チャラが心配そうな顔をして、僕に近づいてくる。
「具合が悪いなら、今日は宿屋でお休みしていようよ」
 チャラはそう言って、この世界から抜け出すための咏唱を始めようとした。
 その瞬间、気持ちが僕の身体を动かした。
 僕が走り出した瞬间、チャラが目を丸くした。
「えっ!? きゃあ!」
 チャラを抱きしめて、抱きしめた势いのまま二人で花畑に倒れ込んだ。
 花びらがぶわっと舞い上がって、僕らの身体を隠していく。

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 花びらが一枚、唇に触れて少し苦い味がしたとき、僕は自分がようやく何をしたかに気付いて、両手を地面について、チャラから离れようとした。
 僕の身体の影にいたチャラが、目を丸くしたまま、両手を僕に伸ばしてきた。
 光を失った水色の瞳が、僕のことをまじまじと见つめていた。
「ねえ……」
 チャラの背中の后ろから、緑色の蔓が几本も伸びてくるのが见えた。
「スイッチ入っちゃったじゃん……、バカ……」
 我慢してたのに……、とチャラの瞳が润んだ。
「あはっ? どうなっちゃっても、知らないからね」
 いいよ、と僕は颔いて、チャラの身体に覆いかぶさった。
 确かな丸みを胸に感じて、柔らかい身体に、僕の身体をゆっくりと寄せる。
 頬を寄せて、チャラの体温を感じて、お花畑の不思议な香りに気を取られそうになりながら、自分の気持ちを少しずつ落ち着かせていった。 本文来自nwxs5.cc
「鬼ごっこのつづき……、どうする?」
「……、これが终わったら……」
「あはっ? やっぱり君っておもしろい?
 ……、膝枕してほしい? 昨夜の続き、してほしいかな?」
 気持ちは落ち着いて、キーワードは言えるのに、今日も僕は言わない。
「ひざまくら……、して」
 代わりに出た言叶に、チャラが耳元で小さく颔いてくれた。


 风の音、太阳の音、花びらが舞う音、チャラの吐息。
 女の子座りで出来た太ももの谷间に、僕は头を乗せて、空を眺めていた。
 チャラが空を向いて、寂しそうに言った。
「いい天気だね……」
 背中がかゆくなって身体をゆすると、チャラの太ももに頬がぶつかった。
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