「え……?」
「忘れたの? あなたの女性恐怖症は、あたしがかけた暗示なんだから。症状の度合いをコントロールすることぐらい、お手の物よ」
そう言ってウィンクしてみせる冴华。
「そんなことが、できるのか……」
ちらりと彼女の可爱らしい顔を见て、総太郎は、この婚约者の恐ろしさを改めて実感させられるのだった。
それから――
総太郎は学园卒业后には正式に冴华の夫となり、下梁瀬の地で暮らし始める。
もちろん楽をさせてはもらえない。冴华をはじめとした神仓流の女性たちの练习相手として、ひとりで多数の相手を引き受けることとなるため、组手はいつも限界まで酷使される日々だった。
が、皮肉なことにそれが総太郎を锻え上げる结果となり、次第に多くの女性を相手にしても耐えられるようになっていった。それでも、冴华には决して胜つことができなかったが……
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そして、夜は毎晩のように冴华主导の性行为に励むこととなった。もちろん奉仕もさせられたが、一方的に犯してくる冴华のセックスは総太郎もしっかり気持ちよくなれたので、性生活はそれほど悪いものではなかった。
そうして年月を重ね、神仓流古武术道场は女性向けの护身术として评判になったこともあって顺调に発展してゆき、総太郎も门下生たちの稽古相手として流派のために贡献を続けてゆく。秘法を使った稽古をするためには腕の立つ男の存在は必要不可欠で、神仓流と斤木流双方に知识のある総太郎はうってつけの存在であったのだ。
どんな形であれ、自分の価値を认めてもらえているのだ。総太郎は悪い気分にはならなかった。
(神仓流も俺の先祖が编み出した武术に変わりはない。こうなった以上は、统一された流派のために顽张るしかないだろう)
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神仓家の蔵には古い文献が多く残されており、斤木家のそれよりも古い时代のことを多く知ることができた。そのおかげで神仓流への理解が深まり、ここに身を置くことへの抵抗も薄れていった。
そうは言っても、かつての仇敌のために人生を捧げなければならない自分の境遇に虚しさを覚えることもあったが――それも、冴华が妊娠するまでのことだった。
日に日に大きくなってゆく冴华のお腹、そこに新しい命が宿っているのを思うと、総太郎は父亲としての责任感が芽生えてきて、いつまでも自分の人生を叹いている场合ではないと思えてきたのだ。
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